筋トレ用のサプリだと思っていたBCAAが、家族の薬の袋に書いてあって驚いた。そんな人は少なくありません。
BCAAは医療の現場では、肝硬変の飲み薬や点滴、栄養剤として使われているアミノ酸です。
BCAAとは何か、医療ではどの薬にどう入っているのか、サプリと何が違うのかを順番に見ていきます。
BCAAとは医療の現場でも使われる3つのアミノ酸
BCAAとは、バリン、ロイシン、イソロイシンという3つのアミノ酸をまとめた呼び名です。
日本語では「分岐鎖アミノ酸」といいます。分子の形が枝分かれしているので、この名前が付いています。
3つとも体の中で作れない必須アミノ酸です。必須アミノ酸は全部で9種類あり、BCAAはそのうちの3つにあたります。
食事でとる必須アミノ酸のうち、およそ半分をBCAAが占めるとされています。健康な大人の必要量は、1日4,000mgほどが目安です。
| 食品(100gあたり) | BCAAの量 |
|---|---|
| まぐろ赤身 | 4,500mg |
| 鶏ささみ | 4,200mg |
| 豚ヒレ肉 | 3,900mg |
| 納豆(約2パック) | 2,940mg |
| 卵(2個) | 2,370mg |
ふだんの食事で肉や魚、卵を食べていれば、必要な量はとれていることが多いです。
それでもBCAAが医療で使われるのは、病気によって血液中のBCAAが足りなくなることがあるからです。
医療用BCAAの飲み薬はリーバクト配合顆粒
医療で使うBCAAの飲み薬としてよく知られているのが、リーバクト配合顆粒です。
1包4.15gの中に、BCAAが4,000mg入っています。カロリーは約16kcalと少なく、BCAAだけを補う薬です。
使われるのは主に肝硬変の人です。肝硬変が進むと、血液中のBCAAが減り、別の種類のアミノ酸が増えます。
このバランスのくずれが、血液中のたんぱく質であるアルブミンの低下につながります。アルブミンが減ると、むくみや腹水、だるさが出やすくなります。
リーバクトはこの低アルブミン血症を改善するための薬で、医師の処方が必要な医薬品です。
飲み方は、ふつう1回1包を1日3回、食後に飲みます。1日に飲むBCAAは12,000mgになり、健康な人の必要量の3倍ほどです。
粉の薬なので、飲みにくいと感じる人もいます。飲みにくくて続かないときは、自分でやめずに処方した医師か薬剤師に相談してください。飲み方の工夫を教えてもらえることがあります。
食事が足りない人向けの医療用栄養剤アミノレバンEN
口から食べる量が足りない肝硬変の人には、BCAAを多く入れた栄養剤が使われます。
代表的なのがアミノレバンEN配合散です。1包50gで213kcal、たんぱく質13.5g、BCAAは6,100mg入っています。
フルーツ味とコーヒー味があり、水や湯に溶かして飲みます。同じ目的の栄養剤に、ヘパンED配合内用剤もあります。
肝硬変の人がたんぱく質を多くとると、分解されてできるアンモニアを肝臓で処理しきれなくなることがあります。
アンモニアが増えると、意識がぼんやりする肝性脳症につながります。BCAAを多く入れた栄養剤なら、この心配を抑えながら必要なたんぱく質を補えます。
肝臓の病気だけでなく、年をとって筋肉が減る「サルコペニア」の対策でも、医療の現場でBCAAが使われ始めています。
BCAAの中でもロイシンには、筋肉のたんぱく質を作るのを助け、分解を抑える働きがあるとされています。
病院では、食事が十分にとれない人やリハビリ中の人に、ロイシンを多くした栄養食品を出すことがあります。たとえば100mlで200kcal、BCAAを2,070mg含む飲み物タイプのものがあります。
点滴で入れる医療用BCAAは肝性脳症の治療に使う
BCAAを多く含む点滴は、肝性脳症で意識がはっきりしない人に使われます。
アミノレバン点滴静注や、モリヘパミン点滴静注がその例です。どちらも病院の中で、医師の判断で使う薬です。
医療では、火傷の治療にBCAAが使われることもあります。
口から飲めない状態でも血液に直接入れられるので、急いでBCAAを補いたいときに選ばれます。家庭で使うものではありません。
医療の検査でわかるBCAAとチロシンの比
血液検査で「BCAA/チロシンモル比(BTR)」を測ると、肝臓の働きの目安がわかります。
肝臓の病気が重くなると、BCAAは減り、チロシンというアミノ酸は増えます。そのため、この比の数字が下がります。
似た検査にフィッシャー比がありますが、測るのに手間がかかるため、BTRのほうが多く使われています。
肝臓の病気で通院している人は、検査結果の用紙にこの項目があるか見てみてください。数字の読み方は、主治医に聞くのがいちばん確実です。
医療用BCAAをサプリで代わりにしない
医療用のBCAAとサプリのBCAAは、成分の名前が同じでも置き換えられるものではありません。
医療用は病気の治療のために量や組み合わせが決められ、効き目と安全性を確かめたうえで国に認められた医薬品です。
サプリは食品の扱いです。運動前に4gから5gほどを飲むと、翌日以降の筋肉痛や疲れが軽くなったという研究があり、筋トレをする人に飲まれています。
| くらべる点 | 医療用BCAA | BCAAサプリ |
|---|---|---|
| 区分 | 医薬品 | 食品 |
| 手に入れ方 | 医師の処方 | 店や通販で買える |
| 使う目的 | 肝硬変などの治療 | 運動時の栄養補給 |
| 1回のBCAAの量 | 4,000mgなど薬で決まっている | 商品ごとに違う |
表のとおり、同じBCAAでも、使う目的と決まりがまったく違います。サプリの袋に書かれた量は、病気の治療を前提にしたものではありません。
反対に、薬を飲んでいる人がサプリを足すのも自己判断は避けたほうがいいです。BCAAのとりすぎにならないか、主治医に確かめてからにしましょう。
BCAAサプリを飲む前に主治医に聞くケース
肝臓や腎臓の病気で通院中の人、薬を飲んでいる人は、BCAAサプリを始める前に主治医に相談するのがおすすめです。
次のような人は、自分だけで決めないようにしましょう。
- 肝硬変や慢性の肝臓病で通院している人
- 腎臓の病気でたんぱく質の量を決められている人
- 医療用のBCAA製剤を処方されている人
- 妊娠中や授乳中の人
生まれつきBCAAをうまく分解できない病気(メープルシロップ尿症)の人は、BCAAそのものを控える必要があります。
健康な人が筋トレのために飲む場合は、商品に書かれた目安量を守っていれば大きな心配はいりません。
BCAAとは医療でも使われる成分だと知っておくと、薬とサプリの区別がつきやすくなります。気になることがあれば、かかりつけの医療機関で聞いてみてください。
元々は充電式のポータブル電源や電動工具分野の専門アドバイザー。現在はキッチン家電や生活家電、カー用品まで幅広く担当しています。「毎日使うものほど、扱いやすさで選ぶ」が持論。
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